昔、ROCKのビーフカレーを食べたホテルオークラのシェフに言われたことがあります。「この美味さはプロには生み出せない」。うまい素材をたっぷり使ってひたすら煮込む。ROCKのカレーはそんなある意味“野蛮”な発想で生み出されていますが、だからこそ“シェフ”にはつくれない。もちろん家庭でも再現できない。気付けば食べたくなるその味は、カレーでありながらほかのどんなカレーにも似ていない、「ROCKのカレー」としか呼びようのない食べ物なのです。


うまい牛肉をたっぷり使ったビーフカレーがうまくないはずがない! どうせなら贅沢に使おう! そんな発想から、ROCKでは甲州麦芽ビーフを一頭丸ごと買い、カレーにもたっぷり使っています。牛一頭は約1,000リットルのカレーになります。

肉だけでなく、野菜だって美味しいものをたっぷり使います。カレーに使う野菜はもちろん、同じお皿に盛られるサラダの野菜も地元産。お米も八ヶ岳南麓でつくられるブランド米・梨北米にこだわっています。地元産がひとつのお皿にギュッと凝縮されているんです。



うまいものをつくるならたっぷりじっくり煮込むべし!ROCKのカレーは最低でも10時間以上、1日かけて煮込みます。煮込んだあとは寝かせ。今度は最低2日かけて冷蔵庫で寝かせます。こうしてできあがるのが、肉や野菜そのものが溶けたエキスともいえるカレーなんです。

うまいものには隠し味だってあります。なかには偶然から生まれた欠かせない要素も。それがイチゴジャム。店頭販売用に大量に仕入れたイチゴジャムがまったく売れず、苦し紛れにカレーに入れたところ、とびきり美味しくなったんです。



ROCKのカレーに欠かせないのが、同じお皿に盛り付けられたサラダ。野菜自体だけでなく、ドレッシングにもこだわっています。一般的なドレッシングではビネガーが使われますが、カレーと交互に食べたときに一番美味しくなるように、ROCKではビネガーを使わないオリジナルレシピのものをつくっています。

創業直後の貧乏だったROCKでスタッフが大好きだったまかないが「バター醤油ごはん」。ほかほかごはんとバターはもともと相性がいいんです。「だったらカレーにもバターを」とのせたのが、お酒のつまみだったレーズンバター。今ではこれがないと物足りない、ROCKのカレーの“顔”になりました。



最後の決め手は歴史と時間。40年以上にわたって愛していただき、たくさんの方の記憶の一部になったことで現在のROCKのカレーは完成しました。今ではサラダを別皿に盛って提供しただけで「これじゃROCKのカレーじゃない」とお叱りを受けます。ROCKのカレーはお店のものでなく、すでにお客さんのものなのです。
